吸排気系のリファインは、もちろん吸気系にも及んでいる。ひきつづき、三菱自動車乗用車技術センター・エンジン実験部主任の柳澤 弘さんにきいた。
「取り回しの変更で、吸気抵抗は20%ほど減っています。とくに効果が大きかったのは、吸気の取り入れ口を短くし、さらにストレートタイプにして、グリルの開口部から直接、冷えた空気を取り入れられるようにしたことですね。これもボディを新設計したおかげです。これまではエンジンルーム後方、NACAダクト下に取り入れ口があったんですが、それだとエンジンの熱の影響を受けやすく、サーキット走行時に熱ダレするという問題点が以前から指摘されていたんです。ワンラップはいいんですが、そのタイムを持続できなかったんですね」
さらに『エボVII』では、中空カムシャフト、マグネシウム製カムカバーなどを採用することで、エンジン上部を軽量化して、直4というレイアウトながら、(水平対向の『インプレッサ』に対抗すべく)いっそうの低重心化を図った、と柳澤さん。こうしたさまざまな改良の結果、『エボVII』ではトルクがアップして、クラス最強の39.0kgmに達するとともに、パワーバンドが広くなったという。
「『トミー・マキネン』仕様とくらべて、最大トルクが発生するまでの回転数が下がったし、低中速トルクも増えていますから、下から踏んでもトルクが増えて、いっそう扱いやすくなっていると思います」
ところで『ランエボVII』では、ターボ・タービンの材質がGSRではインコネル、RSではチタンアルミ合金と異なっている。これはなぜか?「コストの問題です。チタンアルミは比重が軽く、レスポンスが向上するんですが、コストが高いんですね。ところが、お客様のあいだでGSRにRSのタービンに変えると、サーキットのタイムがあがる、という"ワザ"が発見されまして、それ以来、GSRでもオプション設定しています。この価格が5万円なんですが、この値段では我われには利益はほとんどないんですね(笑)。それでもご要望が多いので、商品開発部に交渉して、オプション設定してもらったんです」
ちなみに販売比率では、GSRでは9割を占めるという『ランエボ』。サーキット走行派には、ぜひおすすめしたい"裏ワザ"だ。