シリアスなスーパーカーか、カリスマ美容師のお得意さんを増やすだけか? フェラーリ『360スパイダー』にauto-ASCII24特派員グレッグ・ケーブルが乗った。日本最速試乗記!!
「スーパーカーの屋根を切り取るなんて犯罪に等しい」と言う人がいる。フェラーリが『360モデナ』でやったことがまさにそれなのだが、できあがった『360スパイダー』に限っては、そうすべきであったような気がする。スパイダーの方がいいクルマなのだ。
その理由は、ショーケースに納められた、マラネロの作る珠玉のV8エンジンにある。気筒あたり吸気3バルブ+排気2バルブ、軽量チタン・コンロッド、ツインステージ・エキゾースト、そして400PSというパワー……。これらの数字や文句はすでにおなじみだろう。
しかし、その音を間近に聞くことはあるだろうか? 屋根のない360スパイダーでは運転席から深紅のカムカバーが見えるのだ。地球上にこのV8ほどエキサイティングな体験をさせてくれるエンジンはない。それが運転席から手の届く距離にあるのだ。
カムベルトの唸り、8基のスロットルの金属的な叫び、オーバーランしたときの絞り出すような悲鳴、そして8800rpmまで回したときの響き。これらはすべてフェラーリの伝統だが、それが360スパイダーの場合、生で、1%も薄められることなくドライバーに届くのだ。
しかしエンジン自体はすでにニュースとして新しくない。クーペの兄弟車がある意味で精彩を欠くように感じられてしまう、360スパイダーの魅力はまだほかにもあった……。