【これが『Opa』だ! Vol. 5】機械でしかできないカタチ、あるいは古典から脱したカタチ

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「レジャーとか、ファミリーとか、ユーティリティとか、極力そうしたイメージを出さないようにオーパのデザインは心がけました」と語るのは、トヨタグル−プのデザイン開発会社、テクノアートリサーチの丸谷勝巳氏。初期デザインを押し通した『オーパ』のデザイナーである。

それにしても、かなりエンジニアに泣いてもらったとか。「イヤー、そんなことないですよ。ピラーもここまでは前に出すことが可能だという、事前の話がありましたし。よし、それなら挑戦してみよう、と」

しかし、ただ前に出せばいいということではなかった。ピラーが前に出るほど、キャビンの大きさに対し、ノーズが小さくなってしまうからだ。これはミニバンのスタイリングに近づき、ひいては当初のデザインコンセプトを逸脱することになる。

丸谷氏はいう。「ミニバンにはない長いフロントフェンダーと、ピラーを前に出して稼いだスペースを強調するために採用したのが三角窓風のウインドウグラフィックスです。その一方、クオーターピラーを太く、存在感のあるドカッとした感じにすることで、全体を締めています。ミニバンならば、細いピラーにして開放感を出しますけれど。こうした前後の対比が、オーパのデザインの面白さでしょうね」

オーパのデザインは、現代建築、ブレード(刃)、そして光学機器という3つのモチーフからなるという。「ヘッドランプには顕微鏡や双眼鏡といったイメージがありますし、グリルには機械の切削加工でできた雰囲気を生かしています。手で作るというよりも、機械でしかできないカタチとでもいうのでしょうか」

しかし、と続ける。「クルマのデザインにはわりに古典的な部分が多くて、それから脱したいという考えがありました。サイドのラインを強調しない、ツルッとした感じですとかね。でも、それだけではいけない。そこで、クルマのもつ記号性とでもいうような部分と、新しいカタチへの解釈をミックスさせました。でも、これもちぐはぐになると、単におもしろいだけの、変なカタチになってしまうでしょう。そのバランスの取り具合がむずかしかったですね」

話をうかがっていると、まるでポストモダンを得意とする建築家を前にしているような気にもなってくる。だが、そこには複雑、かつ高度化したカースタイリングの現状があるのだ。細部をながめれば、オーパは最新プロダクトデザインの博覧会場なのだ。

《高木啓》

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