ロ−バ−部門を10ポンド(約1700円)で売却するという話は、オーナーのBMWと、譲渡先候補として手をあげていた投資家グル−プのアルケミー・パートナーズとの交渉が決裂してから打ち出されたものだ。
交渉決裂は突然のことで、先月末までアルケミーによる買収は間違いないと思われていた。アルケミーは5000万ポンド(約85億円)を買収額として提示したと噂されるが、それはロ−バ−が所有するMGブランドを入手したいがためだった。
現在ローバーのバッジをつけているすべてのモデル『25』、『45』、『75』は18カ月以内にモデル消滅、新MGカ−ズ社は、ロータスと共同開発するアルミニウム+複合素材製スポ−ツカーの生産に集中する、というのがアルケミーの事業計画である。
BMWとアルケミーの話し合いが物別れに終わった理由は、アルケミーの事業計画にともなう人員削減で発生する退職金や保証金などの諸費用の負担を、BMWが拒んだからだ。
BMWにとっては、ロ−バ−部門を閉鎖し、MGの商標を手許においておく方が安上がりのはずだ。しかしこの選択肢は、今回のゴタゴタで企業イメ−ジが低下し、イギリスでの売り上げが低下しているBMWにとっては実行できるものではない。
ではどう解決するか? 名目上の10ポンドという額でフェニックスへ売却することだった。法律上“売却”が成立する最低金額である。