GM-スズキ共同開発のアジアン・カー姿を現す!

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ゼネラル・モーターズ(GM)はアジア市場向けにアジアで生産する乗用車のプロトタイプ“YGM-1”を発表した。GMがアジア向け乗用車を現地生産するのは初めてであり、GMがアジアでシェア拡大をはかるための戦略車種である。プロトタイプの寸法は全長×全幅×全高=3615×1600×1545(mm)、ホイールベース2360mm、重量820kgの5人乗りコンパクトカー。シボレー・ブランドを想定し、スタイリッシュでややスポーティな仕上がりになっている。


アグレッシブでスタイリッシュなアジアン・カー

YGM-1は、GMとスズキによって共同開発された。昨年8月以来、両社の関係は製品単位の業務提携からより緊密な戦略パートナーとなっている。小型車の開発・生産にスズキは豊富なノウハウを持っており、WWP(ワールドワイド・パーチェイス、世界規模での資材調達)ではGMが優れている。そして世界各地に広がる両社の事業所(工場、研究所、販売網)を効率良く利用すること。これら3点がこのパートナーシップに期待される成果であり、YGM-1はそれが具体的な形になったものである。


シュライス社長

GMアジア大平洋・社長(GM本社上席副社長を兼任)のルドルフ・シュライスはアジア市場の成長を予測し、GMのシェア拡大を期待しながら、次のように語った。

「アジアでは教育水準が高く貯蓄もある根消費者の中間層が拡大しつつあり、自動車の潜在需要が大きい。欧米市場が成熟する一方でアジア市場は今後も成長を続け、10年後には年間2000万台規模になるだろう。現在アジアにおけるGMのシェアは5%弱だが、それを10年間で10%に伸ばしたい」

10%という数字はGM車のみでパートナーのスズキ等は含まれない。YGM-1がスズキ車に展開する可能性は否定しなかったが、未定であるという。


YGM-1の開発をまとめたのは、アジア大平洋地区技術統括エグゼクティブ・ディレクターの伊勢谷英樹。「活動的なライフスタイルの若年〜35才がターゲットだ。乗用車ではない、商用車でもない、SUVでもない、YGM-1という新しいジャンルのクルマだ」という。

戦略提携から1年しかたっていないので新規開発ではない。 「スズキのプラットフォームはフレキシビリティな車種展開が可能だ」 という。一見してスズキKeiがベースだが、伊勢谷は明言を避け、「ご想像に任せる」とだけ述べた。オペルがワゴンR+をペースにヨーロッパでコンパクトカーを開発したように、スズキ小型車をベースに、各地の市場にあったGM車が今後も登場する。

今までGMグループのアジア大平洋地区における商品開発はオーストラリアにあるホールデンが担当していたが、スズキとの関係強化を機に、地区担当技術担当(伊勢谷)がコーディネートを務める。


伊勢谷エグゼクティブ・ディレクター

デザイン(スタイリング) を開発したのは、マイケル・シムコー率いるホールデンのデザイン部。基本デザインはもちろんスズキ・デザイン部、シボレーのアイデンティティ維持ということでデトロイトからの当然の要求はあったものの、プロトタイプのデザイン開発はすべてメルボルン・スタジオで行なわれた。

ずいぶんスタイリッシュだが「アジアの消費者は新製品、新デザインにたいする許容度、吸収する能力が高い」とシムコーは説明する。発展途上国には見た目は冴えなくとも経済的な機能一辺倒のクルマを投入すれば良い、というのはもはや時代遅れの思考だ。


タスマニアン・レッドと呼ばれる赤。半透明樹脂を多用。

市場投入は2001年をメドにしているが、生産工場は未定。一部の報道でスズキの湖西工場の名があがっているが、基本設計がスズキ車なので部品調達などの体制作りが簡単であるという理由だけで、現時点では未定である。「少し前にGMは、5年以内に日本で現地生産すると発表したが、それにたいしスズキは3年以内にしましょう、と提案した」とシュライス社長は笑う。これもスズキ工場での生産が有力視される材料だが「あらゆる可能性について検討中」。

“6000ドル・カー”といわれるように発展途上国向けでは価格が問題になるが、こちらも未定。アジア地域内の各市場でそれぞれ競争力ある価格になるとGMではいう。YGM-1は多少ラグジャリーな設定になっている。スペックも発表会場では直4エンジン、95ps/7000rpm、11.5kgm/4000rpm、4ATと発表されたが、これも確定ではない。エンジンは「このシャシーには1.3〜1.5ℓクラスまで搭載できる、とだけ言っておこう」とは伊勢谷のコメント。スズキ製であることは確かだ。


左から伊勢谷、齋藤佳男・スズキ会長、シュライス。

生産台数も未定。世界中のジャーナリストの集まる東京モーターショーの機会をとらえて、アジア市場での存在をアピールしたというのが本音だろう。もちろんクルマの開発計画は現実に進行中のシリアスな話だ。車名のYGMは“ヤングGM”の略かとの問いには、社内コードをそのまま使っただけとの解答だったが、そう思いたくなるだけの魅力をもつYGM-1である。

《高木啓》

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